composer | Haydn, Franz Joseph |
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作曲家 | ハイドン |
解説者 | 溝部国光 |
ジャンル | 室内楽 |
品番 | 114 |
版型 | B6 / 30頁 |
発売 | 2023年9月 |
価格 | ¥600+税 |
クラシックのレパートリーには「皇帝」がたくさんあります。
ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」を代表として、他にもモーツァルトのオペラ「皇帝ティートの慈悲」、ワーグナーの「皇帝行進曲」、ヨハン・シュトラウスII世の「皇帝円舞曲」、熊蜂の飛行が有名なリムスキー=コルサコフのオペラ「皇帝サルタンの物語」、チェコにはエルヴィン・シュールホフという作曲家もいましたね。Schulhoffという名前はドイツ語で「校庭」の意味。いや、これはコウテイ違いでした。
ハイドンの場合「皇帝」といえばこの弦楽四重奏曲77番です。この曲の第2楽章のメロディは、ハイドン自身がオーストリアを祝うために以前作曲したものを、再びこの曲に使ったものです。高貴さあふれるメロディだったため、このメロディは「神よ、皇帝フランツを守り給え」という詩を付けて旧オーストリア=ハンガリー帝国の国歌として使われ、さらに現在では第3番の歌詞がドイツ国歌として歌われています。
ハイドンは、このメロディを用いて「主題と4つの変奏」を作曲してこの弦楽四重奏の第2楽章としています。変奏の仕方は実にシンプル。主題はそのまま演奏され、周囲の声部がある時は対位法的に、ある時は和声的に彩りを添えてシンプルなメロディの繰り返しを豊かに広げてゆきます。変奏の作りも非常にわかりやすく、しかしそれでいて奥ゆかしい、まるで変奏技法の教科書のような美しさを持った変奏曲です。
変奏技法って何?とお思いの方は、この曲を見てみると、どのように変奏が行われているのか視覚的にも聴覚上もわかりやすく理解することができることでしょう。
他のクラシック作品をより身近に味わうための入り口としてもお勧めしたい1冊です。