日本楽譜出版社

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英伊仏独 各国語の楽器名対照一覧表

楽譜を読む時に、音符以外のハードルになってしまうのが楽器名ではないでしょうか。ヴァイオリンは知っているけど、ガイゲって何?と言う方も結構多いはず。ガイゲとはGeige、つまりドイツ語で言うヴァイオリンの事なんです。

オーケストラにはもともと楽器もたくさんあるのに、その上同じ楽器が違う名前で呼ばれたりして大混乱!となった時のために、楽器名の各国語対照表を掲載します。

英語 イタリア語 フランス語 ドイツ語

木管楽器 Woodwinds Legni/Fiati Bois Holzbläser
ピッコロ Piccolo Ottavino/
Flauto piccolo
Petite flûte Kleine Flöte
フルート Flute Flauto Flûte Flöte
オーボエ Oboe Oboe Hautbois Oboe/
Hoboe
イングリッシュホルン English Horn Corno inglese Cor anglais Englisches Horn
クラリネット Clarinet Clarinetto Clarinette Klarinette
バスクラリネット Bass Clarinet Clarinetto basso Clarinette basse Bassklarinette
ファゴット Bassoon Fagotto Basson Fagott
コントラファゴット Double Bassoon Contrafagotto Contrebasson Kontrafagott

金管楽器 Brass Ottoni Cuivres Blechinstrumente
ホルン Horn Corno Cor Horn
トランペット Trumpet Tromba Trompette Trompete
トロンボーン Trombone Trombone Trombone Posaune
テューバ Tuba Tuba Tuba Tuba

打楽器 Percussion Percussione Batterie Schlagzeug
ティンパニ Timpani Timpani Timbales Pauken
小太鼓 Snare Drum Tamburo piccolo Caisse claire Kleine Trommel
大太鼓 Bass Drum Gran cassa Grosse caisse Grosse Trommel
シンバル Cymbals Piatti Cymbales Becken
トライアングル Triangle Triangolo Triangle Triangel
タンバリン Tambourine Tambouro basco Tambour de basque Tamburin
カスタネット Castanets Castagnette Castagnettes Kastagnetten
チューブラーベル Tubular Chimes Campane Jeu des cloches Glocken
木琴 Xylophone Xilofono Xylophone Xylophon
鉄琴 Glockenspiel Campanelli Jeu de timbres Glockenspiel

鍵盤楽器 Keybord Tastiera Clavier Tastatur
チェレスタ Celesta Celesta Céleste Celesta
ピアノ Piano Pianoforte Piano Klavier
ハープシコード Cemballo Cemballo Clevecin Cembalo
オルガン Organ Organo Orgue Orgel

弦楽器 Strings Archi Cordes Streichinstument
ハープ Harp Arpa Harpe Harfe
ヴァイオリン Violin Violino Violon Violine / Geige
ヴィオラ Viola Viola Alto Bratsche
チェロ Violoncello Violoncello Violoncelle Violoncello
コントラバス Double Bass Contrabasso Contrebasse Kontrabass

誤解してしまいやすいのは、イタリア語のTrombaでしょうか。トロンボーンかと思いきや、トランペットの事なんです。トロンボーンの方はTromboneなので、ちゃんと語尾まで見分けないと混乱してしまいますね。 省略記号としてはTba.(複数形の時はTbe.)とTrb.やTb.を使うのが一般的です。

日譜で出版している楽譜は、基本的には作曲家が書いた楽器名を尊重してそのまま表記するようにしているので、ほとんどの曲ではイタリア語かドイツ語で楽器名を表記しています。ラヴェルなどのフランスの作曲家はフランス語で表記する事も多いですね。

バルトーク(ハンガリー)、ドヴォルザーク(チェコ)、チャイコフスキー(ロシア)、シベリウス(フィンランド)などの楽譜も出版していますが、幸いにして今のところは伊独仏の3カ国語を中心に表記できていますし、注釈や曲名がつく場合は、なるべく日本語も併記するようにします。必要な場合には楽器名対照表も楽譜と一緒に収載していますので、心配なさらずにお買い求め下さい。

楽器区分と五線の順番

モーツァルトの時代の小さめのオーケストラでも、スコアには10段前後のパートが並ぶ事になります。もっと時代が下ってリヒャルト・シュトラウスやエルガーの大編成のオーケストラになると、25段前後のパートが並ぶ事も少なくありません。パートが増えれば増えるほど、どの楽器のパッセージなのかを把握するのも一苦労するかもしれませんが、五線の並び順の基本ルールを知っておくと、楽譜の全貌をつかみやすくなるかもしれませんよ。

オーケストラ曲では、楽器はグループごとにまとめられる決まりになっています。

1.木管楽器(フルート族、オーボエ族、クラリネット族、ファゴット族)
2.金管楽器(ホルン、トランペット、トロンボーン、テューバ)
3.打楽器(ティンパニ、その他の打楽器)
4.ハープ、鍵盤楽器(ピアノやチェレスタ、チェンバロ)
【5.声楽・合唱】
6.独奏楽器
7.弦楽器(ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス)

基本的にはこういう順番に並ぶ事になっています。ただし5.の声楽・合唱だけは、ハープや鍵盤楽器の下に書く新式の書き方と、ヴィオラとチェロの間に書く旧式の書き方があるので一概には言えません。
だいたい、上記の順番に沿って、もちろん使われないパートは省かれて五線が並んでいます。

各楽器群の中では、基本的には高音楽器を上に書いて、低音楽器を下に書いて、さらには奏者の順番に従って並べる決まりになっています。
アレ?ホルンは?クラリネットは?と思ったあなたは鋭いです。

ホルンはトランペットよりも音の低い楽器ですが、木管楽器と金管楽器の音色をつなぐ役割があるので、木管楽器寄りに置かれる事になって、その結果上にホルンを書いて、その下にトランペットを書くようになりました。

クラリネットはオーボエと同じか、それ以上の高音が出せますが、オーボエには出せない低音が出せます。それで、木管楽器はフルート・オーボエ・クラリネット・ファゴットの順番に並ぶ事になったのです。

こうした五線配列の工夫があって、楽譜を把握しやすくなっていますが、それだけでは不十分。古い楽譜の書き方だと、上から下の五線までを一本の小節線で貫いていたのですが、時代が下り、だんだんオーケストラに使われる楽器が増えるのに伴って、さらに楽器群ごとに区切って小節線を引くようになり、さらには五線の左端のカッコも楽器群ごとに区別するようになってきました。

この工夫のおかげで、パッと見た時にどのあたりがどんな楽器なのか、離れた位置からでもグループ分けが認識できるようになっているんですよ。


だけどご注意を。このルールは、ソロ楽器とピアノの2重奏などには適用されません。このルールに従って書くと、ヴァイオリンソナタをピアノ、ヴァイオリンの順番に書く事になってしまいますからね。
ピアノやハープを含む室内楽の場合は、ピアノやハープを最下段に持ってくるのがお約束、という事になっています。
でも、オーケストラ曲の中で一時的にピアノとヴァイオリンソロが2重奏する、という場合には、ピアノの下にヴァイオリンが書かれる事になります。

なかなか入り組んで複雑かもしれませんが、ルールを知っておくと楽譜の全体像を把握するのに便利ですよ。

ピアノ三重奏?

"弦楽四重奏"と言えば、2つのヴァイオリンとヴィオラ、チェロの4つの楽器が並びます。弦楽器が4つだから"弦楽四重奏"。わかりやすいですよね。

ではピアノ三重奏は?
ピアノ3台かと思いきや、クラシックではヴァイオリンとチェロ、それからピアノの編成を"ピアノ三重奏"と呼んでいます。「ピアノの入った三重奏」くらいの意味です。ジャズの方でも"ピアノ・トリオ"の編成は多いですが、ジャズでのピアノ三重奏は「ピアノ・ウッドベース(コントラバス)・ドラム」の事を指します。

では、"フルート四重奏"だとどうでしょうか?
弊社からも"モーツァルトのフルート四重奏曲第1番"が出版されていますが、この曲の編成はフルート、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロです。とても華やかで優雅な気分に浸れる素敵な曲ですよ。
だけど、身近にフルート奏者がいたら訊ねてみて下さい。仲間とフルート4本の"フルート四重奏"を楽しんだ事のある奏者も多いはずです。フルート4本編成は全ての楽器が同じ身軽さで動けて、音色も統一しやすいのがメリット。このメリットを活かして作曲された作品は少なくありません。

「ヴァイオリンソナタ」と言えば、ベートーヴェンのクロイツェルソナタのように、ヴァイオリンとピアノで演奏します。本当にヴァイオリン1つだけで演奏する場合にはわざわざ"無伴奏"をつけて「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ」と言います。
それくらい、ピアノと一緒に弾くのが当たり前だった、というわけです。

要は「ヴァイオリンが入るのが当たり前」とか「チェロが入るのが当たり前」といった感覚が背景にあるから、「弦楽四重奏」や「ピアノ三重奏」といった名前が断りなく使われているようですね。

他にも"木管五重奏"や"クラリネット五重奏"、なかには"ホルン三重奏"なんていうものまで。それぞれどんな楽器が使われているかわかりますか?

作曲家が持っていた「編成の常識」を、少しずつ広げて知っていくのも、クラシックを身近に楽しむ一つの方法かもしれませんね。

Op.って何?

"ピアノソナタ第2番 イ長調 Op.23"

こんな作品名の表記、クラシックの曲だとよく見かけますよね。モーツァルトならK.やKv.、バッハならBWVという表記がOp.のかわりにくっついている事もあります。

このOp.というのは、Opus(オーパス)の略称です。オーパスは「作品番号」の事。Op.23というのは「作品番号23」とか「作品23」の事なんです。

じゃあOp.24はOp.23よりも新しい作品か?というと、実はそうとは言い切れません。作曲家本人ではなく出版社が出版順に作品番号をつける事もあるので、その場合は作曲順と出版順が入れ替わる可能性があるんです。

作曲家でも出版社でもなく、後世の音楽学者がつけた作品番号もあります。これは作曲家によって事情はさまざま。

J.S.バッハの作品は編成別に分類されて、Bach-Werke-Verzeichnis(バッハ-作品-一覧)の頭文字BWV番号で区別されますし、モーツァルトの作品は作曲年代順作品を整理したLudwig Alois Ferdinand Ritter von Köchel(1800-1877)から採ったK(またはKv)番号、シューベルトの場合は作曲年代順に作品を整理した音楽学者Otto Erich Deutschから採ったD番号で分類されています。

一方で有名作曲家なのに作品番号がついていないビゼーやヴェルディ、マーラーのような例もあります。

ひとくちに作品番号と言っても事情はさまざまなようです。