モーツァルトの時代の小さめのオーケストラでも、スコアには10段前後のパートが並ぶ事になります。もっと時代が下ってリヒャルト・シュトラウスやエルガーの大編成のオーケストラになると、25段前後のパートが並ぶ事も少なくありません。
パートが増えれば増えるほど、どの楽器のパッセージなのかを把握するのも一苦労するかもしれませんが、五線の並び順の基本ルールを知っておくと、楽譜の全貌をつかみやすくなるかもしれませんよ。

オーケストラ曲では、楽器はグループごとにまとめられる決まりになっています。

1.木管楽器(フルート族、オーボエ族、クラリネット族、ファゴット族)
2.金管楽器(ホルン、トランペット、トロンボーン、テューバ)
3.打楽器(ティンパニ、その他の打楽器)
4.ハープ、鍵盤楽器(ピアノやチェレスタ、チェンバロ)
【5.声楽・合唱】
6.独奏楽器
7.弦楽器(ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス)

基本的にはこういう順番に並ぶ事になっています。ただし5.の声楽・合唱だけは、ハープや鍵盤楽器の下に書く新式の書き方と、ヴィオラとチェロの間に書く旧式の書き方があるので一概には言えません。
だいたい、上記の順番に沿って、もちろん使われないパートは省かれて五線が並んでいます。

各楽器群の中では、基本的には高音楽器を上に書いて、低音楽器を下に書いて、さらには奏者の順番に従って並べる決まりになっています。
アレ?ホルンは?クラリネットは?と思ったあなたは鋭いです。

ホルンはトランペットよりも音の低い楽器ですが、木管楽器と金管楽器の音色をつなぐ役割があるので、木管楽器寄りに置かれる事になって、その結果上にホルンを書いて、その下にトランペットを書くようになりました。

クラリネットはオーボエと同じか、それ以上の高音が出せますが、オーボエには出せない低音が出せます。それで、木管楽器はフルート・オーボエ・クラリネット・ファゴットの順番に並ぶ事になったのです。

こうした五線配列の工夫があって、楽譜を把握しやすくなっていますが、それだけでは不十分。古い楽譜の書き方だと、上から下の五線までを一本の小節線で貫いていたのですが、時代が下り、だんだんオーケストラに使われる楽器が増えるのに伴って、さらに楽器群ごとに区切って小節線を引くようになり、さらには五線の左端のカッコも楽器群ごとに区別するようになってきました。

この工夫のおかげで、パッと見た時にどのあたりがどんな楽器なのか、離れた位置からでもグループ分けが認識できるようになっているんですよ。


だけどご注意を。このルールは、ソロ楽器とピアノの2重奏などには適用されません。このルールに従って書くと、ヴァイオリンソナタをピアノ、ヴァイオリンの順番に書く事になってしまいますからね。
ピアノやハープを含む室内楽の場合は、ピアノやハープを最下段に持ってくるのがお約束、という事になっています。
でも、オーケストラ曲の中で一時的にピアノとヴァイオリンソロが2重奏する、という場合には、ピアノの下にヴァイオリンが書かれる事になります。

なかなか入り組んで複雑かもしれませんが、ルールを知っておくと楽譜の全体像を把握するのに便利ですよ。